キングダムハーツにはもうすでにたくさんの"ムリ"が存在していることに気付されて考えていたこと
#これはポエムです。
私のブログは、私のツイッターアカウントを補足してくれている人がおよそ読んでくれていると思っているので、私がいかにキングダムハーツが好きか・人生の色々な行動や判断基準の一部にしてきたというのは割愛します。
そのわたしが、めちゃくちゃ衝撃を受けた発表がありました。
「あ、キングダムハーツってそういうゲームになっちゃったんだ」という感じに、16年間応援し続けた自分にとって非常にショッキングな内容でした。
そもそも発表と言っていいのかわからない、わたしの観測した範囲だとそのことは軽くスルーしている人ばかりで、実は結構大きい話だと思っているんだけど、誰も本質に気付いていないのでは。そんな風に思えてしまいました。
それは2018.9.22のTGSの一般公開日1日目に起こりました。
その日スクウェアエニックスブースにて、キングダムハーツの特設ステージがありました。わたしは現地には行っていませんでしたが、ウェブ配信をずっと視聴していました。
それは開始17:40ごろから17:56ごろの話で、MCの麒麟・川島さんが「ストーリーが壮大で、結構ここまでくると説明するのも複雑なんですけど、どうですかそのへん野村さん」と振ります。
野村さん「ちょっとムリですね」
これ、めちゃくちゃショックでした。
キングダムハーツの世界観の根底というか、もっと大きいところが揺らいでしまった。いや、そもそもずっと前から揺らいでいたのでは。そんな焦りすら感じました。
「"無理"って言っちゃったよ野村さん」という具合に、私は冷や汗を死ぬほど掻いていました。そのときはちょうどランチを取っていましたが、一気に味が分からなくなりました。放心しました。
どうして?
ほとんどの人ならこれは笑い話でアッハッハって済む発言だと思っています。「あー野村さんでも簡単に説明するのはダメなんだ、そうだよね」、いや、それが本来の反応だと思います。実際、私も「ああ、野村さんでもダメか。そうだったか。」とすぐさま思いました。そして不思議と笑いが込み上げました。
じゃあ私は何に驚いていたのか?
キングダムハーツのストーリーを説明するのが、もはやディレクターでも難しいことについてではなく、キングダムハーツの世界観を作り上げた野村さんが「無理」という言葉を使ったことについてでした。
自分の考え方を変えた雑誌の一つ、ニンテンドードリームの2007年9月号。
野村さんのロングインタビュー特集が載っています。
12年前!もうそんなんになるんですね。紹介しておきながらびっくりしています。
本誌のインタビューでは新しく発売されるDSソフト「すばらしきこのせかい」について言及しつつ、キングダムハーツの開発体制や、野村さんのこれまでの経歴についても触れられています。
ここでゲームソフト「すばらしきこのせかい」についてちょっと紹介すると、DS専用ソフトで、当時としては画期的……というか史上初・2画面同時バトル展開というゲームシステムということで、当時話題を呼びました。
これはゲームやっている人にはわからんでしょうけどこのシステムは本当にすごくて、インタビューでもディレクターの神藤さんが『彼ら(共同制作した株式会社ジュピター) から、最初は「こんなの無理だ」って言われたんです(笑)』と、企画の無謀性について言及しています。
で、インタビューではキングダムハーツも奇跡のソフトだよね、と言及されています。
キングダムハーツを最近好きになった人からすれば、とても意外かもしれませんが、スクウェアとディズニーが共同でゲームを作ること。しかもオリジナルキャラクターが主人公というのは当時のゲームファンを相当数驚かせました。
今ですら、ディズニーとゲームを作るとなるとおそらくミッキーやドナルドといったディズニーキャラクターが主人公に来るのが、言っちゃえば「普通」と思うじゃないですか。
野村さんも雑誌内インタビューでは『ディズニーの方から「ドナルドのゲームを作ってほしい」とかいろいろ提案があったんですけど』と前置きをした上で、なんどもなんども粘りつよくディズニーと交渉をして企画を押し通したというエピソードを語っています。
そして「すばせか」のシステム話に戻ってきてやっぱりすばせかのシステムはすごいよね、よく通したよね、そもそもみんな最初から「ムリだ」って考えちゃうよねというインタビュアーの誘導から野村さんが一言。
『基本的に自分は「ムリだ」という言い逃れは好きじゃないんです』
インタビュアーさんも『ディズニーを説得した野村さんの言葉なだけに、とても重いですね』と一言。
続いて神藤さんも『だから、僕らも「それはムリです」と絶対に言わないようにしてるんです。』という言葉を続けます。
当時、このインタビュー記事を読んだ自分はものすごく感銘を受けました。
固定観念を捨てて、粘り強く取り組んでいった結果、キングダムハーツという素晴らしいゲームが生まれた。
そのひとつの要因として「ムリって言わない」ってところがあるんじゃないかな、と考えていたわけです。
で、それが、冒頭に戻るわけです。
ストーリーを簡潔に伝えることはムリ。
もうね、めちゃくちゃ脱力しました。野村さん、ほんまか?ほんまか?
もちろん、、、野村さんも会場の笑いを取ったんだろうなーーーーーーとか、そもそもインタビューからおよそ10年、10年後やぞと。
そりゃ、、、、、、、、変わっちゃうよね。などと、わかったようなことを書きつつ、けれど相当なショックを受けた自分がいました。
もちろん今の私と10年前の私だってほぼ違った生き物だと思います。というか、そうじゃないと困るんですよね。身体的なことだけではなく、内面的にも立場的にも。
だから「変化しないこと」を他の人に要求するというのはかなり傲慢なのも理解しているわけですが、「ああ、キングダムハーツにもムリという言葉が使われるほど、そんなに時間が経ってたんだな」とつくづくと思い知らされていました。
そりゃファンはもちろん開発者も、そしてゲームも変わる。
(余談なんだけど、個人的にはカイリのキャラデザが一番それ(時代や価値観)を反映していると思っている。10年前に発売された2はやっぱり10年前の女子高生っぽい感じの髪型なのに、今年発売される3のカイリは、イマドキの女子高生さながら髪の毛も綺麗に巻いた流行りのショートボブスタイル。これはこれでもちろん可愛いけど、もし2のすぐ後に3が発売されていたらカイリの髪型は違ったんだろうなって思っている)
過去記事でも雑に、「キングダムハーツはなんかすごくファンが増えた」ということを述懐しています。
予兆はすでにあって、それがたまたまそのタイミングでようやく言語化された。
自分が「キングダムハーツは、ムリがあるゲーム」ということを受け入れた瞬間でした。
この「無理」というのも色々な解釈ができて、イベントのキャパシティが無理、ファンのモラルが無理、このストーリーは無理、このマーケティングは無理、もうそろそろ昔と同じ情熱と愛情でファン活動するの無理……色々あると思います。
ただ、これは植松伸夫さんがファイナルファンタジー8か10のサウンドトラックに書いていたことなんですけど(ちょっと思い出せない)、「離婚したけど新しい恋ができるじゃん」といった具合に、マイナスも結局プラスに転じて考えることができるよね、人生ってそんなもんって話があった気がしまして。(雑な記憶なので間違っていたらすみません)
実際、キャパシティが無理だのマーケティング戦略についていけないだの、それこそ1発売当時からしたら贅沢な悩みではあるんですよ……。(あくまで個人的には。)
ほんと、「キングダムハーツというゲームが好きです。ディズニーとファイナルファンタジーと宇多田ヒカルがコラボしている。そう、今三ツ矢サイダーとバヤリースでCMやってるあれだよ。」ぐらいまで言わないと伝わらなかった時代がありました、信じられる?自分の周りだけかもしれんけど、それぐらい今の待遇から比べたら冷遇もいいところだった。
それが今では新宿駅やら丸ノ内線やらでどこかしこにも広告が見られるし、「キングダムハーツのグッズはこちらです」と、グッズショップでも堂々とコーナーが設けられるぐらいに認知度が上がった。キングダムハーツで育った世代が、ようやく経済を支える側に入ってきている。
これって1の発売当時から考えると本当にすごくて、「無理」という言葉が使われるようになった反面、こういう時間の経過が同時に起きていたんだなと胸がいっぱいです。
だってキャパシティいっぱいだってのも結局ファンが増えたからだし、ファン活動が無理になってきたって言っても、他に情熱が注げる何かが見つかっているってことじゃないのかな、と、思わざるを得ないんですよね(お気楽な思考)
それらの無理を超えてきて、それでも形になったゲームを遊べるというのはファンとしては至上の喜びだと思ったことと、そしてキングダムハーツ3もきっと何か、無理の分だけ、嬉しい何かがあるんじゃないかなんて勝手に期待しつつ、いちファンとしてありがたく発売日を迎えていきたいと思いました。
というわけでようやく二週間後発売ですね!!!\(^o^)/
盛り上がっていきたいと思います!!!