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天気の子を観てきたんだけど感想

天気の子を観てきましたのでその感想。相変わらずネタバレあります。

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観た後の感想は「これ賛否両論だな。」というのが第一声。次に「逆ポニョかなあ」でした。

 

「天気の子」は雨続きの関東が舞台で、そこに突然現れた、天気を晴れにすることができるヒロインの話になります。

しかしヒロインが晴れを願えば願うほど、ヒロインの体は犠牲になり……という流れ。セカイ系よくあるやつです。

 

モヤッとポイント

主人公の帆高くんがとにかくかっこよくない。容姿とかそういう問題ではなく、感情移入できない自分勝手系主人公だったからです。

君の名は。の瀧くんのときも思いましたけど、自分勝手で視野が狭いところが強くなってしまったヒーローに思います。もっといえば帆高くんはアウトローすぎるため、彼の幼い行動によって、ヒロインとその家族を危険な目に遭わせてしまっていることは、「いやあ、若いね」と言える範疇を超えたように思えました。

「悪いことは悪い」という流れをもう少し意識して出してもいいんじゃないのか、あるいはヒロインがヒーローに「君はとんでもないことばかりする」という風に意識(誘導)させても良かったのでは。と思ってしまいました。

 

あと新海監督ならではの、ヒロインがやはり優秀すぎる(からヒーローのだらしなさが目立つ)んだと思いました。

帆高くんは家出をしようと決意して、船内放送も聞き入れずに甲板で危ない目に遭う、バイト先を探そうとヤフー知恵袋に書き込むものの当然見つからず毎日カップ麺。お金も尽きかけて路頭に迷い、惨状をヒロインに助けてもらう、という非常に情けない主人公です。

一方でヒロインのひなちゃんは、残された弟のためにも年齢を偽ってバイトを始め、それもクビになるため風俗に身を落とす覚悟まで決め、家でも倹約料理をこなして弟の世話をします。そして帆高くんに勧められて晴れ女商売を始めます。うん……優秀だね……。

そして帆高くんは、ひなちゃんからおそらく晴れ女商売のマージンを受け取っていることも推測できる描写。(帆高くんは指輪を買ったことと、須賀さんの方からはお金を全然受け取っていない発言があったので。)

 

なんだかなあ。かっこよくないんですよね帆高くん。

それで警察に追われている時も、「俺が頑張って働くから!3人で暮らそう!」というセリフも、「少年、おまえ自分の立ち位置をわかってる?」と、本当は男らしいところなんでしょうけど、それまでの彼の行動を考えると、どうしてもしらけてしまったポイントでした。

それも結局ひなちゃんに「晴れて欲しい?」って聞かれた時も素直に答えてしまい、そしてひなちゃんがいなくなってから、警察とファイト中に「何もわかってないくせに!」と言い切っちゃうの、まったくかっこよくない。それは八つ当たりでしかないよね〜〜〜と、結構厳しい目線で見てしまいました。

 

次のもやっとポイントは、話の終わり方です。

これも結局「帆高くんがかっこよくないから」と思ったから言えることなんでしょうけど、帆高くんは晴れ女の能力を使ってきたために消えたひなちゃんに、この世界に戻ってきて欲しいと願います。そしてひなちゃんが帰ってきた代償として、東京は雨が降り続け、街の大半は水に沈みます。

ここのラストは昨今の事情を考えると、難しいなあと思ったところです。率直に書くと、昨年から頻発している、大規模気象災害に遭われた人たちのことを考えました。ついでに、雨続きで病気になっている我が家の植物のことを思い出しました。

 

つまり、「自分勝手な少年が、1人の女の子を好きだという感情だけで世界の天候を左右してもいいのか?」という問答に落ち着くわけです。これの答えとしても「困ります、他の人も参加している世界なので。」です。

だいぶ前に修造さんが天気ネタで弄られたときに、

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天候によってつらい思いをされる人もいるので、

これなんだよなあ、でした。

晴れて欲しい人もいれば雨が降って欲しい人もいるので、時事ネタとも絡めると、この作品を手放しで褒めるには難しいな、というところで「これは賛否両論あるな」と思った次第です。

 

もうちょっとこの作品がファンタジーな世界設計であれば、「なるほどこの世界はこういうことになったのか〜〜〜」と歓迎できたのでしょうが、新宿・池袋・渋谷・台場・代々木……と、東京のシンボルともいえる場所をふんだんに使われ、リアルな世界観を感じさせられると、さすがに現実世界を想起しないわけにはいかないというか。「これは現実ではない、虚構だ」と思わせてもらいにくいところも結構厳しいポイントでした。

 (本筋には関係ないんですけど、庵野監督はやっぱりそのへんすごいんだよなあ……とさらに思いました。)いやまあ、もちろんファンタジーなんですけどね。後味が悪かったから飛び出る感想なんだと思います。

 

メタ的にモヤッと

こういう「もう少し主人公は周りを見られる人間じゃないと応援できない」「現実に同じ問題が起こって困っている人もいるのに、こんな無神経な話を作るなんて」的な感想って、自分が大人になっちゃったからだよなあというのはあります。うーん辛い。もし自分が中高生のときに観ていたら、ヒロインとヒーローは誠実な愛で戻ってこれた!世界なんてどうでもいいし何より2人は幸せになれたからよし!と思えたのかもしれません。

とはいえ、「ほしのこえ」みたいな自分もがんばってヒロインに追いつく系ヒーローがそろそろ欲しい。ほしいよ新海監督……。

 

よかったところ

やっぱり世界が綺麗でした。

今作も空も水も綺麗でしたし、街並みもとにかくよかったです。

東京育ちなので、キャラクターたちが東京のどこを歩いているのか、すぐにわかることができて、そういう面で感情移入できたのがすごく楽しかったです。めちゃくちゃ頑張ってロケしてくれたんだなあ。と、東京民としては感謝でした。東京が嫌いな人も当然いると思いますが、私個人は映像の中にある時代の綺麗な東京の風景が残っているの、嬉しいんですよ。

srknr.hatenablog.com

あとやっぱりひなちゃんが可愛い。好感が持てるタイプです。

 

よかったっていうかなんていうか「天気の子」はそれでもこれでいいと思う

パンフレットにあった監督インタビューで、「『*****』というセリフが書きたかった」「世界はそんなにシンプルではない〜〜〜」といった、作り手の意思がはっきりしていたところがよかったです。君の名は。でやったことと対比して別場所に着地させたかった、といったエピソードも無性に感心して、「ああ、そういうものが作りたかったんなら、これはそういう話にならざるを得ないよね」としみじみ思いました。

監督自身も「これは賛否両論」「正しいのか正しくないかでいえば正しくないと思う」と、かなり考え尽くした上で、監督自身が信念を持って描きたかったテーマを描ききったのなら、少なくとも自分はそれに文句を言う筋合いはないなと思いました。(文句と感想はノットイコール)

話の根源が無意識の邪悪ならもうどうしようもない駄作になっていたかもしれませんが、監督が「天気の子」の世界に対して愛があるなら、いち観客の自分は享受するのがいいんだろうなあと思いました。(いやまあ、文句言いたい人はそれでもいいと思いますが)

まあ最近の作品の傾向として、何かしらの政治的主張というかプロパカンダが多いので、批判もある程度見据えた上でも「俺はこれが描きたい!」っていうのは尊重された方がいいと思います。

 

というわけで監督インタビューでいいなと思ったところ

少年が狂った世界を選ぶ話を描きたかった、貧困を描きたかった、オリンピック前に変わる東京を描きたかった。の三本です。

 

とはいえ

ちょいちょいディティールが気になったといえば気になったんですが。

たとえばひなちゃんはスマホを持っていないのは貧困だから(なるほど)→ホテルのカラオケで星野源の「恋」を歌うのも、きっと新しい歌謡曲に触れる機会がなかったから(うんうん)、とは思いつつも、「じゃあどうして2021年の設定にしたの……?ひなちゃん中3なら多分『恋』は古く感じすぎると思うぜ……」とかは思いました。

 
でもまあよかったところ

君の名は。のキャラがちょいちょい出てきておもしろかったです。四葉ちゃんどこにいたんだろ……。

 

 

次はドラゴンクエストでも観ようかなあ。