コミケ99の私的振り返り
あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
2021年の締めくくりは、サークル出展者側としてコミケ99に参加していました。
そのことについて忘れないうちに、反省点を踏まえつつ所感を書いておきたいと思います。
- 前日までにモチベーションが上がらない
例年ほどコミケ参加にあたりモチベーションが上がりませんでした。正直に言えば、今回のコミケは参加をキャンセルしたかったという気持ちが大きかったです。
参加をキャンセルしたかった理由は、大きく分けて三つです。
- 私生活が忙しいから
- コロナの影響が気になるから
- コミケに参加する意義が見出せないから
まず一つ目の『私生活が忙しいから』についてですが、そのままの意味です。今回のC99準備に関する時間を、十分に用意する余裕が持てていませんでした。
そのため、『2020年12月に開催されるはずだったC99が、2021年12月開催にスライドされたこと』、『2020年12月のコミケ99に向けて申し込んだサークル情報が、2021年12月開催のコミケ99に対して、継続申し込みされること』について、大変恥ずかしいことに、当選通知が来るまで把握していませんでした。
【参考】
ではこの情報を把握した上で、配置辞退の手続きができていたかと言われれば、2021年8月当時のスケジュールおよび精神的余裕を振り返ると、実質無理だったと思っています。
それほどに2021年は、コミケ(を含めた余暇の過ごし方)について考えることが難しいほど忙しかったことが、結果としてモチベーション維持に繋がらなかったと考えています。
余談ですがコミケ前々日に、『らぼちっく;げーと』の編集長であるぺんぎんさんに、コミケ参加にあたり諸注意読み合わせzoom会に招いてもらいました。(感謝!)
そのときに「いやはや、申し込み辞退するの忘れてて……」と話したところ、「うちもそんなもんw」と言ってもらえ、ズボラ仲間がいることに超安心しました。
次に二つ目の『コロナの影響が気になるから』についてですが、この日記を執筆している時点においては、世界的にオミクロン株の影響が危惧されています。実際、日本でも市中感染のニュースが連日報道されています。
そんな中、多くの人が行き交うコミケ会場に行き、自分はともかく他人に感染させないかどうか?という点において、参加する前から非常に強い不安感を抱いていました。
しかしコミケという長い歴史を持つイベントに対して、無断キャンセルする勇気は湧かず、自分の中の妥協案として、感染防止対策を十分にした上で参加することを決めました。
そういった背景から、今回は「参加するかどうか?」という心理的ハードルが高く、相対的に参加モチベーションが下がったと考えています。
最後に、『コミケに参加する意義が見出せないから』についてです。
これまでにコミケに参加しているモチベーションについて、自分という人間を冷静に省み、考えた内容が以下の通りです。
- コミケというイベントに、いちオタクとして参加したい
- インターネットに直接的に書けない内容を、発表したい
- おもしろそうな本があれば、入手したい
- 疲れない範囲で参加したい
- 他の人と交流したい
- 赤字はなるべく出したくない
これらを挙げた理由について本意を細かく列挙するのは本筋でないため、割愛します。
自分がここで伝えたいことは、C99に参加するにあたり、これら6点について自分の中で満足できるラインを超えられるか、自信がなかったということです。
そのため、参加する意義が見えていませんでした。
- 当日のモチベーションも上がらない
なんとか参加することを決めましたが、当日もモチベーションを上げるのが大変でした。振り返ります。
- 隣がダミーサークルだった
- 売り子がいなかった
- 思いのほか寒かった
- 人が少なかった
- 買いたい本を積極的に探さなかった
- オンラインイベントの手軽さと比較する自分がいた
- 費用対効果といった数字を考えきれていなかった
1. 隣がダミーサークルだった件について
今回は誕生日席かつ、同じテーブルを共有する隣スペースが終始荷物置きという状況に、心がどうしても引きずられるときがありました。
隣が完全に無人だったら、あるいは売り子さんがいれば、まだ心を無にできたかもしれません。
以前にサークル参加していたフォロワーさんが「この島は全然ダミーがいなくて感動した」とブログに書いていましたが、今ならその気持ちがすごくわかります。
今まで売り子で手伝ってくれた人と、両隣サークルの熱量に、知らず引っ張ってもらえていたことに気づけたC99でもありました。
2. 売り子がいなかった件について
今回は売り子さんを依頼しませんでした。理由は、自分の参加モチベーションが上がっていなかったことと、コロナ禍の影響を踏まえて今までと同じように頼むのは、その人に対して申し訳ないと考えていたからです。
売り子さんがいないことにより、今までは「ちょっと散策/お手洗いに行ってきます」といった気楽にできていたことに、当然制限が生まれました。
そのため、普段より念入りに準備する必要があり、モチベーションの方まで気持ちを維持しにくかったというところがありました。
厳密に書くと、当日は遊びに来てくれたけいなさんに売り子を少し手伝ってもらいました。感謝。
3. 思いのほか寒かった
事前に天気予報を調べ、当日の最高気温が6度であることは把握していました。
ただこれまでにも、冬場の幕張メッセ開催イベントに何度か参加していたこともあり、ヒートテック+上下裏起毛で凌げるだろうと思っていました。
それでも寒いこと寒いこと……。後述しますが今回は人が少なかったことも影響してか、会場内はとにかく寒かったです。
持ってきたカイロは全部使い、14時ごろには着てきた羽毛ジャケットを着込みましたがそれでも寒くて、持ってきた食料を全部食べました。
環境によってモチベーションは簡単に左右されると改めて思いました。
4. 人が少なかった
ほとんどの島中サークルはこれでモチベーションが下がったのではないでしょうか。うちもそうです。
もともと入場者数を絞っているのは知っていましたが、実際に体感すると本当に人が少なかったです。コミケなのに、人と人がぶつかっている様子が全然見受けられないことに驚きました。
自スペに座りながら、「一般参加なら快適だろうな」、「緊急事態宣言後のディズニーもこんな感じだったな。入園する側は快適だけど、ディズニーとしては確かに早く入園者数を戻したいよなあ」といったことを思いました。
ちなみに頒布した数でいえば、例年の30%まで下がりました。
コミケ97の1日あたりの来場者が約18万人に対して、コミケ99では5万5千人だそうなので、綺麗に比例した方だと思います。
5. 買いたい本を積極的に探さなかった
もともと私自身は、本業アニメーターさんが趣味として発行している本や、他人がやっていなさそうなことを真に追究している本を好んで買います。
ですのでたとえば以前は、自分がよく見るアニメのプロによる非公式イラスト本や、個人のバイアスがかかった研究や旅行本を好んで買っていました。
しかしながら今回評論島が開催された31日は、もともと自分のニーズとは一致していないスペースが多く配置されました。
そしてコロナの影響を考え、(例年より少ないとはいえ)人混みの中を積極的に回りたいと思えなかったことと、今は旅行も気楽にできないご時世のため、買う気が湧かなかったというところが大きかったです。
6. オンラインイベントの手軽さと比較する自分がいた
2021年に、私はあるオンラインイベントにサークル側として参加しました。
そのイベントは、pictSQUAREというサービスを使って開催されました。コミケと比較して、非常に便利で楽だったと感じています。
そのため今回コミケに参加するにあたり、無意識的に準備コストを比較して、モチベーションを落としていたと思います。
たとえば、pictSQUAREで行われたイベントの参加費は550円でした。
コミケの参加費用と1万円と比較して考えると、およそ20倍もの差があります。
また、コミケのサークル参加者は8:45までに入場手続きを済ませないといけません。(参考:https://www2.comiket.co.jp/info-c/C99A/C99AAppealEnclosure.pdf )
コミケ会場である国際展示場まで、自分の家からは距離があるため、朝は遅くても6時起床が求められます。
一方でオンラインイベントは、事前にサークル情報や頒布物リンクなどを登録すれば、当日はいてもいなくても構わないという利点があります。つまり、朝起きなくても問題なしです。
次に準備〜頒布〜決済の流れについてです。
今回C99では感染防止対策のため、サークル側に対して、見本誌にはビニールをかけること、一定人数に触られたら取り替えることといった事前アナウンスがありました。
次に、キャッシュレス決済を取り入れたサークルをいくつか見かけました。しかしコミケではまだ現金でのやりとりが多く、サークル側は釣り銭準備が求められます。
いち早くキャッシュレス決済を導入していた先輩や後輩のサークルに立ち寄ったところ、9割ほど電子決済での購入だったが、それでもやはり釣り銭対応が必要だったと話してくれました。
一方、pictSQUAREはオンライン開催のため、実体としての見本誌を用意する必要がありません。サークル参加者が用意するのは、サンプルページです。HTML等の知識も特に必要ではありません。
さらにいえば、ビニール, 除菌ティッシュ, 除菌用アルコールといった感染対策防止グッズはもちろん、テーブルに敷く布だとかポスター印刷等を準備する必要がありません。
頒布についても、決済はすべてオンライン上で済ませることとなります。手数料は取られますが、実物のお金のやりとりは一切起きないので、小銭準備も必要ありません。
本の受け渡しは、店舗に委託していれば手間がかかりませんし、出展者は本にかかる送料も購入者側に上乗せさせることもできます。もとより電子本であれば、発送の必要もありません。
もちろん他にも比較できる要素はありますし、コミケにもメリットはあります。
それでも自分の中で大事にしている軸として、オンラインイベントに参加する方が遥かにコミケのメリットを凌駕したと思いました。
まとめると以下の通りです。
起床時間 | 参加費用 | 買い出し準備 | 両替準備 | 売り子さん | 参加者数 | 帰りの荷物 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
コミケ | 6時起き | 約1万円 | ◯ | ◯ | いればありがたい | 例年通りなら多い | たいがい重い |
オンラインイベント | 起きなくてもいい | 550円から | × | × | 必要ない | イベント規模によるがコミケと比較すると少ない | 帰りという概念がない |
次項でも少し述べますが、今回のコミケは参加時間あたりに対して頒布した数が少なく、結果として、売り上げ額はオンラインイベントで参加した時とほぼ同額になりました。もちろんオンラインイベントに参加した時のジャンルがそもそも違うことや、既刊新刊数の違いは考慮する必要がありますが、それでもやや残念な結果に終わったと思っています。
そのこともあり、コミケに対する魅力を少し感じられにくくなったと思います。
7. 費用対効果といった数値を考えきれていなかった
今回、新刊執筆をする時間をほとんど捻出できていませんでした。
その結果、「このクオリティなら低価での頒布が妥当であり、参加費は数で巻き返そう」と考えました。
しかし今回はコロナ禍の影響によって、参加者数が少ないコミケでした。そのため、自スペースに寄ってくれる人が少なくなり、結果として数で巻き返すのもだいぶ苦戦しました。
ただしこれらは、事前に想定できたことです。
自分のニーズである「参加費ぐらいはトントンにして、早めに帰りたい」のであれば、一冊当たりの単価を上げること、そして一冊のクオリティを従来より追求する必要がありました。そこは今回一番の反省点だと捉えています。
今回はコロナ禍の中での初コミケという事情はあり、実際に当日を迎えないとわからない部分はあったと思いますが、それでも数字を読む・考える力が甘くなっていたと思いました。
まとめ
モチベーションが低いままのコミケとなりました。
一方で、「モチベーションが上がらなかったことについて、反省はした。しかし軌道修正して、今後またコミケに参加する価値を見いだせるか?」というところは、今一度自問自答しています。
コミケの最大の魅力は、なんといっても『リアルで体験できるお祭り騒ぎ』だと私は考えています。
それがコロナの影響がどうなるかわからない今、またその体験を味わえるのか。そして私自身がそのときまで待てるのか(=コミケに参加する気持ちを持てているか)どうか、確たる答えが出せないでいます。
率直にいえば、今後の参加はキリのいいC100で終わりにしてもいいとうっすら考えています。
余談ですが、私の中で一番の達成感を得たコミケはサークルデビューしたC96です。
当時は初参加にあたり、多くの人々の協力を得てあの熱狂する時間帯に参加することができたということが、本当に嬉しく、充実した時間を過ごせました。
そして、身に余る結果が後からやってきたと思います。
【参考】
このときは稚拙なデビュー作にして、新年早々からTLの人たちに笑いを届け、評論島という場所を参加者以外の人にも少しでもお伝えすることができたことは、かなり嬉しい出来事でした。
(しかし内容がお粗末で、当時手にとってくれた人には本当にすみませんそしてありがとうございましたという気持ちが強いです。ありがとうございました。)
このときの達成感を乗り越えるには、
- 頒布物のクオリティを、自分の中で納得できるレベルに達成させる
- 売り上げや頒布数といった数値目標を明確に立て、それを大幅に超える結果を出す
といった、自分にとってかなり厳しい目標が必要だと思っています。
そして『その目標を立てるところまで、私はコミケに対して真摯に取り組めるか?』という問いの答えを考えるにあたり、『私はそれより先に、やらないといけないことがある』という、現実の課題とのバランスに苦しんでいる気がします。
そのためコロナ禍以前に自分の中の問題として、モチベーションを保つところが難しいと考えています。創作あるある。
少しまじめなことばかり書いてきましたが、それでも今回コロナの影響もある中で無事に開催されたことと、そして参加できたことに非常にありがたく感じている自分もいます。
開場アナウンスとともに湧く拍手の音にしばし「コミケが帰ってきたんだな」と茫然として、拍手に少し出遅れました。次に参加するなら、大きな拍手ができるようにしたいです。