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母校が卒業後に学科改組をしていた結果、資格取得に影響を食らった話

※こちらのブログを書いているのは2023年1月なので、この時点での法律や規則の話に基づいて書いています。つまり2030年とかに読みにきていただいても参考にならないところも出るかもしれませんが、その点ご了承ください。あと今後同じように科目等履修を利用して教員免許を取得したい人のためになるべく汎用的に書きますが、当然全部は参考にはならないと思いますのでその点もご了承ください。

このエントリは簡単に言えば『情報の教員免許取得をしようとしたところ、母校の電気通信大学の卒業後、学科改組をしていた影響を喰らって大変困った』という話です。

 

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最近SWEのキャリアについて無性に不安に思うところがあり、いずれは所持している数学教員免許を活かして、教員になるのもいいかもしれないと漠然と考えていました。

ただし現実問題、教員としての実務経験のない人間(かつそこそこの年齢を想定)がすぐに雇われるか?ということを考えた時、それはいささか非現実に思えました。

体感ですが数学科教員は数が多いでしょうし、仮に実務経験なしの歳を重ねた人間と若い人間が同時に来たなら後者を採るだろうと思いました。

なら今後も需要が高まる情報科教員免許を取るのはどうだろうか。教員としての実務経験がなくとも、SWEの経験がむしろプラスに活きるかもしれないと思い至り、取得に向けて調べることにしました。

 

1. どうやって免許を取得するか

通常、教員免許の取得をするには以下のルートをたどる必要があります。

  1.  教職課程のある大学に入学する
  2.  教育に関する科目や教科に関する科目(後述)を履修する
  3.  教育実習に行く
  4.  大学卒業と同時に取得する(授与される)

しかし私がまたどこかの大学に再入学をして免許を取得するのは、費用や時間面において現実的ではありません。

そこで最初に思い出したのが、むかし教育実習に行ったときの母校(都立高校)で、情報の先生との雑談です。「先生はどうして高校の情報科教員になったんですか? もともとPCに興味があったんですか?」と尋ねたことがありました。

その先生の回答は「私はもともと小学校の教員だったんだけど、歳をとったら小学生を教えるのがしんどくて。現役教員だと、東京都の教育委員会が夏休みに開講している講習を受ければ、他免許を取れる制度があるんです。それで高校の情報の免許を取りました。現役教員じゃなくても科目等履修ってあるじゃないですか、アレで教科に関する必要単位を揃えたら他免許を取れますよ」というものでした。先生、ぶっちゃけすぎる。

ただその先生から『教員免許を持ってさえいれば、他の科目/校種免許を取ることは4年制大学に入学して必要科目を履修する通常ルートより、単位数を減らして取得できる』と教われたことはナイスでした。

 

科目等履修を利用して情報の教員免許を取得しよう、そうしよう。

母校の電気通信大学では、数学/理科/情報の免許を取ることができます。つまり、情報科の教員免許を取るための、文科省から認定された科目を開講しているということです。

幸いにも私は母校のある調布市内に住んでおり、通学のしやすさはもちろん、学内の空気にも慣れ親しんでいること、さらに『情報』に関する科目を勉強するにはうってつけの大学であることは我が身を持って知っており、何より自分自身が母校で学び直したいと思っていました。

過去と今の自分の成長度合いを比較したい。あの頃よりかはまともに勉強できるだろうか。科目等履修で友達100人できるかな

 

ただし、次々と大きな壁にぶつかります。

 

2.  科目等履修で教員免許を取得することについて

教員免許を取るには、通常は大きく分けて2種類の科目を(必要単位数を揃えて)履修し、教育実習に行く必要があります。

2種類の科目のうち一つは、教育に関する科目です。日本の学校教育は明治時代からどのように変遷してきたのかといった歴史や、子供は年齢に応じてどのような精神の発達を遂げるのかといったことを学ぶ科目を取る必要があります。

私はすでに数学科教員免許を取っているので、新たな教員免許取得に際しては、これらの履修を除外できます。

 

もう一つは、教科に関する科目です。

数学であれば応用幾何学微分積分といった、大学レベルで学ぶ数学を履修する必要があります。

情報科教員を取得する上で、私は後者の教科に関する科目が足りていないことが自明です。(もし取れていれば、卒業時に2科目同時申請できるため)

 

これが仮に文系学部出身者ならゼロからの積み上げでしょうが、幸いなことに私が卒業した大学は『電気通信大学』です。

母校は教員を輩出するというよりかはエンジニアを輩出することを目的とした大学なので、必修としてコンピュータサイエンスに関連する科目も履修しています。

すなわち『情報科教員』免許を取るための教科に関する科目のいくつかはすでに履修済みである可能性が高いと私は考えました。

その状態でスタートできるならば、科目等履修で単位を揃える際に、費用面でも時間面でも負担はだいぶ減らせるのではなかろうかと画策します。

 

3. 電通大での科目等履修について

科目等履修(+の申し込み)について知るため、電通大で科目等履修を経験した後輩(電通大卒)に連絡をとってみました。

「願書とか何書いた? 申請とかどんな感じだった? どんな科目をとってどんな感じだった?」という具合です。

後輩は忙しいながらも快く相談に乗ってくれ、「願書はそんなに見られていない気がします。講義も普通に受けられました。科目等履修生だからって変に除外されるとか試験で優遇されることもないです」といったことを教えてくれました。

さらに「ただ、先輩はもうすでに教員免許を持っているなら、放送大学でも足りませんか? 電通大は科目等履修の費用が高いので、他も調べた方がいいです。僕は入学料と履修したい単位の合計で、一気に30万ぐらい振り込みました」という知見をもらいます。

個人的にはせいぜい8~10単位ぐらいが必要で費用としては10万ぐらいじゃないかと思っていたため、30万と聞くとさすがにドキッとしました。

ちなみに電通大1単位あたり14,800円です。1科目ではありません

例えば『情報科教育法1』という科目は2単位ですので、14,800*2=29,600円かかります。

「まずは必要科目および単位数を把握した上で、科目等履修をどの大学で行うのかを考えた方がいい」ということに(実に当たり前のことですが)気づきました。

また、電気通信大学の科目等履修のページには、演習や実験科目が履修できないことが書き添えられており、そのことについても若干不安に感じておりました。

 

それならば電通大で履修した科目に加えて、放送大学学芸大学で開講している科目を履修したらいいのではないか。

それに放送大学を中心に履修すれば、通学の手間も費用面の負担も減るしよくないだろうか?と考えます。ただ後述しますが、これにはちょっと問題が発生します。

(ちなみに放送大学では教員免許が取れる!という触れ込みを見ますが、放送大学では教育に関する科目と教科に関する科目を履修できても、教育実習に行くことができないため、放送大学単体だけでは教員免許が取得できません。)

 

4. 必要単位数の確認

東京都に在住、もしくは都内の学校に勤務している人の場合、東京都教育委員会に免許を申請することになります。

普通免許の申請方法 ―免許取得の根拠法令から探す―|教員免許案内|東京都教育委員会ホームページ

私も東京都教育委員会に問い合わせメールを送りました。

『中高の数学科教員免許を持っています。(中略)科目等履修を利用することで新たに情報の免許を取得したいので、必要な単位数を教えてください。』といった内容です。

 

結果、

 1. すでに免許を持っているので、『免許法別表第4表』での『情報』を適用するのが良いと思われます。

   中学校・高等学校の教員免許を有し、他教科の中学校・高等学校の教員免許を取得する場合(別表第4による申請)|教員免許案内|東京都教育委員会ホームページ

 

 2. 実際に必要な科目名については、履修する予定の各大学に確かめてください。

 3. 履修済みの科目が使えるかどうかは、母校に問い合わせてください。

 

言い回しは微妙に違いますが、おおむねこのような返答をいただきました。

別表第4表の『情報』に必要な科目を一部抜粋すると、以下の通りです。

参考:https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/static/kyoinsenko/menkyo/m_shinsei/data/m_kentei02_16_r02.pdf

教科に関する専門的事項に関する科目 最低必要単位数 
情報社会・情報倫理 1
コンピュータ・情報処理(実習を含む) 1
情報システム(実習を含む) 1
情報通信ネットワーク(実習を含む) 1
情報と職業 1
小計 20

小計が20というのは、すべての項目を必要単位数で埋めた上で、『情報社会・情報倫理』に該当する科目を計15単位とってくるか、あるいは『コンピュータ・情報処理』に該当する科目を10単位、『情報と職業』に該当する科目を5単位とってくるといった組み合わせをすることで、合計で20単位にしなさいということです。

ただし、一つの項目においては大学を跨ってはいけないことになっています。

 

例えば、こういう取り方であれば問題はないですが、

教科に関する専門的事項に関する科目 取得状況
情報社会・情報倫理 放送大で1単位
コンピュータ・情報処理(実習を含む) 電通大で10単位
情報システム(実習を含む) 学芸大で2単位
情報通信ネットワーク(実習を含む) 放送大で3単位
情報と職業 電通大で4単位
小計 20

 

以下のような取り方は、大学を跨ってしまっているので認められません

教科に関する専門的事項に関する科目 取得状況
情報社会・情報倫理 放送大で1単位、電通大で5単位
コンピュータ・情報処理(実習を含む) 学芸大で2単位、電通大で2単位
情報システム(実習を含む) 学芸大で1単位、電通大で2単位
情報通信ネットワーク(実習を含む) 放送大で1単位、電通大で2単位
情報と職業 学芸大で2単位、放送大で2単位
小計 20

これを認めてしまうと、例えば『コンピュータ・情報処理(実習を含む)』において、「電通大で実験を履修して、学芸大で実験を履修すれば、座学の試験を受けなくて済む」といったことが可能になるからです。(適切に書くと包括的な内容を履修できていないことになるからです)

つまり私の場合、電通大ですでに履修した単位を使える(使う)ならば、電通大で科目等履修をしないといけないことがわかります。

 

5. 電通大の教職課程支援室ならび教務課とのやりとり

履修済みの科目のうち、どれが『教科に関する科目』として申請時に使えるかを調べる必要がありました。

結論から書くと、想定する以上に時間と精神には余裕を持った方がいいです。

繰り返しになりますが、電通大は教員を排出することに特化している大学ではありません。そのため、教員免許申請に関する最新版の知識を正確に把握している人が学内にいると思ってはいけないということです。

むしろ教務課の人に対しては、自分で先行して調べて「こちらについては東京都教育委員会の人に聞いてきたんですけど……」「卒研指導してくれた先生にも確認してきたんですけど……」などと主張した方がいいと思いました。

 

そしてここらのやりとりにおいて本題の、学科改組の影響を受けることになります。

 

まず自分がやったこととして、教職課程支援室に予約を取りました。情報の免許を取得するために、どの科目を履修する必要があるかを調べるためです。

(ちなみにカリキュラム自体は教務課でも教えてくれますが、教職課程支援室に先にアポを取って質問した方が、卒業生が同様に他科目の免許を取得した過去の例も把握していてスムーズに話が進むのではないかと考えました。)

旧課程において数学の教員免許を取得していること、旧課程において情報の免許取得のための科目をいくつか履修しているのではないかと考えていることなど、職員さんは丁寧に話を聞いてくださり、「現在は1類と2類の学生がそれぞれの類でこれらの単位を履修することにより、情報の免許を取得しています。だからあなたも情報の免許を取るなら1類か2類かどちらかの開講状況に合わせて、足りない単位を履修する必要がありそうです」といったことを教えていただきました。

 

さて電通大は現在、『情報理工学域』という制度を採っており、1類は情報系、2類は融合系、3類は理工系の内容に特化しています。

ここで厄介なのが、2類で開講している『力学』と、3類で開講している『力学』は同じ科目名でも、その類を卒業するにあたり求められる内容が微妙に違うため、2類の学生が3類の『力学』を履修して卒業することはできません。

(というか、そんなことをしようものなら履修登録の段階で撥ねられるはずですが)

だから情報科の免許を取る場合、1類に合わせてとるか、2類に合わせてとるかというところを求められますが、自分は迷わず1類を検討しました。1類には卒研でお世話になった先生や、自分が履修してきた科目担当の先生の大半が吸収されており、新しい科目を履修する上でもある程度アドバンテージがあると思ったからです。

 

次に1類の、情報の免許を取得するための『教科に関する科目』と、電通大で開講している対応科目を一部抜粋して掲載します。

教科に関する専門的事項に関する科目 電通大の授業科目
コンピュータ及び情報処理(実習を含む。)

・基礎プログラミング及び演習

・論理設計学

・情報領域演習第二

・情報領域演習第三

 コンピュータ設計論

 アルゴリズム論第二

 ソフトウェア工学

 計算理論

 ゲーム情報学

・印は教職の『教科に関する専門的事項に関する科目』において必修単位。

ここで私と教職課程支援室の職員は「おや」と気づきます。「一番上に書いてある『基礎プログラミング及び演習』は、履修済みである。だから今回の免許申請において免除になる可能性が高い」と考えました。

そのほかの科目に関しても、いくつかすでに履修しているといえそうなものが見つかりました。幸先が良いと思い、教務課に向かいます。(なおこの日は担当の職員さんがお休みだったため、1日ロスします)

 

しかし教務課に成績証明書を提出して確認してもらったところ、結果は『使えません。必修は全部履修してください』と言われます。は??????? なんで?????? まじ?????

 

私「ここにある『基礎プログラミング及び演習』は私も在学中に履修しました。卒業から年数もそうは経っていませんし、内容も大きく変わっていないと思います。だからもう一度とる必要はないと思っています。取るとしたら、在学中に履修していないこの『情報領域演習第二』だけとかになると思いますけどいかがですか」

教務課「学科改組したじゃないですか。同じ科目名かつ同じ内容でも読替ができないと思います。

 

つまり。

私は卒業をしているため、教員免許を取得する在学生の分と同時に、大学から教育委員会に対して一括申請をすることができません。私が個別に教育委員会に申請することになります。

その申請時に、『学力に関する証明書』という、教務課から発行してもらう書類の提出が必要です。

様式は私自身も見たことがありませんが、『コンピュータ及び情報処理(実習を含む)』という項目で発行してもらう場合、「次の者はこれこれの領域について、実習ではこの科目、座学ではこの科目を履修して所定の成績を収めたので学力を保証します」といったことが書かれていると思われます。

このときに、「実習では旧課程の***の科目、座学では新課程の***の科目を履修して」という書き方ができないと言われました。

 

つまり『基礎プログラミングおよび演習』をもう一度一年生に混じってやり直しってこと??? また配列を用意して素数を表示するプログラムとか書くの? はい??? わたし実務で******のプログラムを書いたこともあって****とかにも載ってるのに? まじ???

 

私「読替は効かないんですか?」

教務課「基本的には、旧課程で留年しまくってさらに途中で先生が退官なさって必修単位が消滅した学生さんの救済措置として、新課程ではこの単位を代わりにとってくださいねということのために使います。そうでないと、公平性が担保できないんですよ。今回のが通るなら、たとえば旧M科の学生が旧S科の力学を履修して卒業することも可能になってしまうからです。

それに旧課程の単位と新課程の単位をハイブリッドして学力に関する証明書を出したとして、教育委員会文科省がそれを免許申請時に認めるかどうか、こちらではわからないので出すことが難しい。だから新課程の様式に従って単位取得を進めていただいた方がよいかと。これが学科改組していなければ、また話は違ったんですが。」

私「たとえば、旧課程当時の担当教官らが読替OKといっても難しいでしょうか?」

教務課「こちらでは各科目の内容を把握していないのでなんとも言えませんが、基本的には難しいかと。結局は教育委員会に学力に関する証明書を提出するときに、それが通らない可能性もあるので。文科省から旧課程において、教職に関して必要な科目と認定された科目が消滅しているという状態だからです。」

 

といった話をされました。

もし仮に、卒業時に情報科教員取得のための単位が全部揃っていて、免許申請だけしていないという状況であればよかったのですが、全部揃っていないまま卒業したためこのような事態になりました。

 

あと余談ですが教務課から、衝撃の事実を告げられます。

教務課「免許法の別表第4の申請ということですけど、それは現在教員として働いている方に適用されるものだと思うんですよね。だから別表第1でとっていただくことになると思います。更に言えばあなたは旧法で教員免許を取っていますが、新法においては教育に関する科目が新たに増えています。そちらも履修していただく必要があります。」

 

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新法では、『いまの学校は普通学級でも発達障害ボーダーの児童/生徒が増えたため、先生になる人はそういう生徒を教えられるようにそういった特性のことを学びましょう』という目的の科目が追加されています。私は旧法で免許を取得したので、その科目を履修していないという状況でした。

 

結局のところ自分はそれらの科目履修は必要なく、別表第4での適用、つまり教科に関する科目のみで免許をとれることを確認しています。(東京都教育委員会学芸大の教務課に問い合わせて確認しました。その節はありがとうございました。) 

繰り返しになりますが電通大は教員を排出することに特化している大学ではないので、教務課の職員を責める気は全くないですが(もともとイレギュラー対応をしていただいていることもあり)、科目等履修に関する願書を提出するのにタイムロスを食らったことは痛かったです。

そういったこともあり、自分がどういったルートで科目履修して免許を取得するか、自分が主体的になって調べてから臨んだ方がよいと思いました。(これが学芸大といった教育大学ならノウハウがたくさんあって、科目履修生でも聴いたらなんでも丁寧に教えてくれるかもしれませんが)

 

ちなみに学力に関する証明書における新旧課程ハイブリッド記載については、もし東京都教育委員会文科省がOKを出すなら教務課としても出せるかも……?といった話をされたので、現在ほうぼうに確認中です。

履修済み単位が認められれば、他に足りない単位を取得するための費用と時間に回せるので、そこが本当にどうにかなってくれたらいいのになあ(懇願)

 

まあそのへんが通らないなら情報科教員免許取得は潔く諦めて、普通自動車運転免許を取ろうと思います。はい。

母校が学科改組をしたことにより、思わぬ影響を受けていたという話でした。