君はJR渋谷駅のガンダムスタンプラリーの尊さを覚えているか【オタクがスタンプラリーでオタク生を学んだ話】
冬です。寒かったり。冷えたり。スタンプラリーの季節です。
時は遡り、2018年冬。JR東日本では、「JR東日本機動戦士ガンダム スタンプラリー」が開催されていました。(~2018.2.27)
なんと総数、65駅。ルールは簡単。各駅の改札を出たところに設置されたスタンプ台まで向かい、台帳に押す。そして電車に乗って次の駅に向かう……これを繰り返し、一定数のスタンプを押した台帳を指定された場所に持って行くと、そのスタンプ数に応じて素敵な記念品がもらえるというゲームです。お祭りです。
文章にするとサラッとしていますが、かなりハードです。制覇するには都内だけでなく、千葉や茨城まで飛び出すことになります。移動時間は結構こたえます。
さらにJRとひとくちに言っても、山手線から中央線京浜東北線埼京線総武線……まだまだあるんですがこれらの路線を乗りこなせないといけませんし、交通費もそれなりにかかります。待合室がない冬場のホームで10分以上の待機もありえるし、路線の激混み時間帯に突入するとガチ泣き必須です。
参考までに、こちらの記事の人は14時間半かけて1日で全駅制覇しています。スタンプラリーと言って侮ることなかれ。これは体力と知力を総動員して、そしていかに美しくスタンプを押せるかという芸術点を競い合うスポーツです。
さて、スタンプ台の話題に触れる前に一つ。
筆者はここまでやたら偉そうに解説していますが、ファーストガンダムを完走していません。許して。でもガンダムさんは読んでたから紫ババアのことは知ってる。
まあでも、駅ごとの特色が見えるのが好きなんですよ。
シャアがあった品川駅は専用のフォトスポットがあったり。
まあ大体はラリー台が置いてあるぐらいです。場所の問題もあるので。
ふふっ(写真を観て笑っているオタク)
しかし、原作を知らないで始めるスタンプラリーは、至極当たり前ですけどキャラクターごとの激しいネタバレを喰らいます。
スタンプラリー台の説明に「戦死」などと書いてあると、「あっ……うん……そうでしたか………。」などと、さながら知らない人の墓参りにやってきてしまったような、なんともいえない気持ちになります。(※観ていない自分が悪い)
っていうかガンダムって戦争ものじゃん? むしろ死ぬか死なないかの二択しかなくない? 違う? そんな疑問が湧いてくる。
そしてやってきた渋谷駅
渋谷駅は、ザクレロでした。ざ、ざくれくち?
激しい。
2018年当時のJR渋谷駅の構造ですが、少し解説すると、みなさんが想像する渋谷は109、ハチ公、ヒカリエとかだと思うんですね。そういった渋谷の象徴から、かなり離れたところに接続するのが新南口改札でした。
いい感じの画像を見つけたので、ペタッとしておきます。
出典元:https://shinwa-mahall.co.jp/news/detail/?p=697
新南口改札だけ超ぼっち。
2020年現在は多少変わっていますけど、山手線ホームから新南改札口に向かうまでは、途中埼京線の狭いホームも突っ切り、連絡通路では100m短距離走ができるんじゃないかと思うぐらいの距離があります。(中央線で東京駅に着いた人が、ディズニーにいくために京葉線ホームの方までいくじゃん?あれに匹敵するめんどうくささのレベルでした。)
まったく知らないキャラクターの墓参り、もといザクレロのスタンプのために新南改札口にひたすら向かう自分。
この途中通路に本屋があった。
そして始まる自問自答。「どうして私は観ていないガンダムのためにスタンプラリーをやっているんだろうか。」、そんな怖いことを考え始める距離である。(当時一人で頑張れたのか実際超不思議)
しかしその傍にあるポスターが、私をやさしく見つめます。
ハートマークが謎すぎる。
でかい。主張が激しい。(※全長5mぐらいはあった)
なんだろう、いやでも目に付く。
「428は3906で良かった…… 3906は428で良かったかい?」
とにかくこのポスターが目立つ。しかも複数種類存在している。
何の数字だろう、しばし立ち止まって考える。
数字は何かのメタファーかな、どう読めばいいんだろう。
428はヨンにはち、ヨニや、うーん四ツ谷ではないな、、、すると……渋谷?
「渋谷は3906でよかった 3906は渋谷でよかった?」
3906……サンキューゼロロク。はて。サンキューレイロク……
サキュレロ?????
「シブヤはサキュレロでよかった」
うーん、なんかもうちょいだな。サクレロ…………サクレロ???
ハッとしてスタンプラリーの用紙を見直します。
「シブヤはザクレロでよかった ザクレロはシブヤでよかった?」
「渋谷は ザクレロで よかった ザクレロは 渋谷で よかった?」
……………!!!!!!
謎の数字の意味に気づいたとき、筆者はポスターの前で思わず涙が出ます。
もう一度書きます、
「渋谷は ザクレロで よかった ザクレロは 渋谷で よかった?」
私もオタクであるがゆえ、オタクとして様々なコンテンツを渡り歩き、そして愛してきました。
しかし、愛しているのにも関わらず「これが好きだ!」と堂々と主張することはおろか共有することもなく、「わかりあえる人たちでやるのが好きなの!」と排他的になり、ときには自らの承認欲求をコンテンツを応援する行為にすり替え、自分の気持ちをぶつけるがために、思いの丈のままにその対象物や世界観を破壊するといった、一方的な愛ではなかったと言い切れるだろうか?
コンテンツに対してリスペクトは、あったか?
愛するがために周りに対して攻撃的になり、ときには価値観が合わない人間を侮辱し、その傲慢さを押し通していなかっただろうか?
愛される側の、都合は考えたか?
愛される側の、気持ちは考えたか?
一方この渋谷駅の社員さんはどうだ。
誰に見られるかわからない、ましてや渋谷駅のような規模の大きい駅では壊されるかもしれない。
しかしそれでもこれほどのスペースを陣取り、
不安を乗り越え、惜しみもなく自作のザクレロプラモデルを飾り、
そして公衆の面前で問いかける。
(ヲタク変換)
「私は君を愛せてよかった 君は、私でよかった?」
なんという。尊い!!!!!!!
周囲への配慮も忘れず、惜しみなく愛を表現して、そして自分の愛のあり方を、パートナーに問いかける姿勢。
そしてそれを許可した周りの駅員さん。(いや実際問題、これが一番の障壁だったと思います)
愛は、一方的なものではなく、お互いのことを想い合った瞬間に成立する。
そして愛を成立して維持させるには、周りの理解と、リスペクトが必要なのだ。
などと、このポスターから愛の真理を教えていただいたとも言えます。
大げさでもなんでもなく、とにかく感動して立ち尽くした瞬間でした。
私は冒頭にも書いた通り、ザクレロはおろかファーストガンダムすらよく知りません。
しかし、これらの掲示物を見た瞬間に思いました。
愛だ。ここには真実の愛がある。
(ザクレロの形)
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とまあ、2年前のエピソードなんですけど、今はまた新たにガンダムスタンプラリーをやっているのを眺めて懐かしくなって、フォルダから日の目を浴びました。
興味のある方、是非是非。
そして渋谷駅の社員さんに最敬礼。
今年も挑戦しようかなー。